中島誠之助『ニセモノ師たち』講談社文庫

中島誠之助『ニセモノ師たち』講談社文庫
画像の本はテレビの鑑定番組で有名な中島誠之助さんのエッセイです。10年以上も前の本ですが、面白い内容なので今読んでも面白いです。当店は骨董屋さんとはまた違うので、この本で書かれているような「識者をして迷わしめるくらい精緻巧妙な」ニセモノにお目にかかる事はありませんが、ニセモノと出くわす事はわりとあったりします。

よく見かけるのはブランド品のニセモノです。もちろん、わたしたちはそのブランドのメーカーなので、その製品がニセモノだと断言する事はできません。今までの経験上、そのブランドがそのような製品を作るはずがないと判断した品を買取できませんとお断りするわけですが、特注とかでそういった製品が作られた可能性が全くないとは断言できません。一流ブランドは、その名に恥じない製品を送り出すために、ブランド名のロゴが歪んでいたり、縫製が甘かったりするような製造工程でミスのある品物が世に出ないようにチェックを厳しくしていますが、間違って不良品が出てくる可能性も全くないわけではありません。そのようなイレギュラーな品物はニセモノではないですが買取できませんとお断りさせていただく事があります。

とはいえ、買取をお断りさせていただくお品は、こう言っては失礼ですが、明らかにおかしな品がほとんどです。ロゴが歪んでる、縫製が甘い、金具がいびつ、刻印のパターンが間違っているなどなど、本物のブランド品から見たら手抜き製品ばかり。結局は、手抜きして安く仕上げるから、本物よりはるかに安い金額で販売ができるというわけです。本物は細部までこだわって仕上げるので、製造にコストがかかって安価には販売できません。よくインターネットのオークションなどで一流ブランドの品が安く出品されている事がありますが、中古で状態が悪いならまだしも、一流ブランドの品が定価をはるかに下回って販売していたらニセモノだと思った方がいいでしょうね。

ニセモノというわけではないですが、宝石などで本来の価値より明らかに高すぎる買い物をされた方も多くお見かけします。宝石なんて、買った時の10分の1程度の買取金額にしかならないのが相場です。よく他の同業者さんのチラシでサファイア50万円で買取します!とかありますが、50万で買取できるクラスのサファイアなんてもとは数百万円の品でまず見かける事の出来ない品物です。では逆に、たとえば500万の値札が付いてるサファイアなら50万で買取できるのかと言えば、そうとも限りません。大きさだけで色の悪い品や、隠れたところに傷のある欠陥品で本来なら販売で50万もしない品を、高い値札をつけておいて半額だ!8割引きだ!と安く見せかけて売る悪徳な業者さんもいたようです。当然、そういった値札だけ高い品は、買取する時は本来の価格にふさわしい金額で買取する事になります。

この本の中で中島さんが言ってますが「その品物を買ったら儲かると思った時」がニセモノに引っかかるポイントだそうです。新品のブランド品が定価の半額で買える!とか、100万のダイヤが30万で買える!とかで、すごく得をする、儲かる、とか思ってしまったら、ニセモノやニセモノでなくても価値の低い物を高く売りつけようとする悪徳業者に嵌められそうになっている危険性があるので注意してください。それを本当に欲しいと思って、品物と値段に納得して買われるのであれば問題ないのですが、特に気に入ったわけでもないのにお得だからと買ってしまうとかえって損をしてしまいます。売る側は貴重な品なので買っておけば価値が上がる、など言葉巧みに囁きますが、価値が上がる品をみすみす手放す商売人はいません。身内が病気になってお金を工面する必要が・・・ともっともらしい嘘をつく詐欺まがいの商売人もいるので気をつけてください。

今は情報化社会なので、悪徳な商売もしにくい時代になったようですが、逆にインターネットのオークションなどを利用してあくどく儲ける輩は絶えないようです。ぜひこの本を読んで、世にはびこるニセモノに騙されない目を養ってください。


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